松に鷹図:雪村の世界

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松に鷹は、戦国時代に好まれた画題。鷹の勇猛で精悍な姿が、戦国武士たちの嗜好にかなったからだ。この「松に鷹図」も武将の求めに応じて描いたものだろう。雪村の画法の神髄がよく発揮されている作品である。双福一対からなる。上は左手のもの。松の老幹に、一羽の鷹がこちらに背を向けて止まっているところ。その表情は精悍そのものである。

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こちらは、右手のもの。松の老幹に止まった鷹は、躰を下に向け、なにやら見つめているが、これは餌になる小動物を狙っているのだろう。いまにも飛び出しそうな動きを感じさせる。

どちらの絵も、松を藁筆で描き、鷹は面相筆を用いて丁寧に描いている。松の枝の先には、一本一本丁寧に描かれた葉が、画面に緊張感を生みだしている。この松の描き方には、南宋の画家牧谿の影響が指摘できる。牧谿は日本の多くの水墨画家に影響を及ぼした画家だ。

(掛幅 紙本墨画 各126.5×53.5㎝ 東京国立博物館)







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