山水図:雪村の世界

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雪村は「溌墨法」を用いて描いた「溌墨山水図」を数多く作った。この作品はその代表的なものである。溌墨法というのは、中唐の画家王墨が案出し、南宋の玉澗が大成した技術。墨をはねちらし、筆を使わずに形を整えるというものである。

この絵の場合には、背景の山の部分と手前の草むらの部分に、墨をはね散らしてイメージをあらわした後で、筆を用いて細かいところを仕上げている。墨をはね散らした部分は、独特の雰囲気を醸し出している。

溌墨法は、大画面には適さないと見えて、この絵も小品である。全体にざっくりとした感じの中から、幽邃な詩情がただよってくる。

着賛は、箱根湯本の早雲寺住持大室宗碩のもの。「隔岸呉江万里天登楼越水一扁船秋耶冬兮山容好半是如粧似眠」とある。なお、大室宗碩は永禄三年(1560)に死んでいるので、これはそれ以前の作である。

(掛幅 紙本墨画 22.6×69.2㎝) 






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