グローバル時代の逃走劇:ゴーンがレバノンで日本を非難

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カルロス・ゴーンが日本を脱出してレバノンに逃れていたというニュースが入って来た時、大方の日本人は、日本という国がコケにされたと思っただろう。それに加えて、ゴーンが逃亡先で記者会見を開き、自分の無実を弁明したとあって、日本の司法当局は二重にくやしい思いをしただろう。なにしろ完璧に裏をかかれて逃げられ、国の威信を傷つけられたうえに、記者会見まで開いて言いたい放題なのに、自分たちにはなにもできることがないからだ。こんなに面目つぶれのことはない。

この事態について、日本の司法手続きに甘いところがあったのが原因で、その甘さは、外国人のゴーンに日本が手心を加えたことからきているので、日本人並みに拘留すべきだった、というような意見も出ているようだが、日弁連は、それはいわゆる人質司法への逆戻りであり、みっともないからやめろと言っている。小生も日弁連に同意見だ。今回の事態は、日本の司法の裏をかいたゴーンに軍配があがった形だが、それについては、日本の刑事司法がいまだに人質司法に依存していて、世界水準の合理的手続きから乖離している実態がもたらした側面もある。グローバル時代なのだから、刑事司法の分野もグローバル化する必要があるようである。

今回ゴーンが開いた記者会見では、記者たちの関心は、ゴーンがどのように日本から脱出したのか、その詳細を知りたいということだったが、ゴーンはそのことについては触れず、専ら自分がいかに日本人にはめられたか、について滔々と述べ立てた。また、日産関係者のほかに、政府のスタッフもこの陰謀の片棒を担いでいたと非難したが、その人物の名前は、レバノン政府に迷惑がかかることを理由に明かさなかった。日本の刑事司法の非人間性についても大いに不平を述べた。

こうしたゴーンのやり方については、日本の当局者が腹をたてることは無理もないので、法務大臣などはたびたび声明を出してゴーンを非難した。だがそうした非難は、負け犬の遠吠えぐらいにしか聞こえていないようだ。日本の司法当局は、今後このような失態を演じて世界中の笑いものにならないように、システムの改善に取り掛かる必要があろう。

なお、ゴーンの言い分については、各国メディアの反応は抑制的だ。ニューヨーク・タイムズは、日産の連中にはめられたというゴーンの主張を淡々と紹介する一方、記者会見におけるかれの尊大な態度に不快感を示している。また、ゴーンが国籍を持つフランスのル・モンド紙は、一切の論評抜きで、ゴーンの主張を紹介する一方、記者会見の様子を写したビデオをネットで公開している。

この記者会見は、たまたまトランプとハメネイの喧嘩と重なったこともあって、各新聞の一面トップを飾るような扱いは受けなかった。トランプとハメネイの喧嘩のほうが、よほど大きなインパクトがある。なにしろ狂信的な宗教の指導者と、頭のだいぶいかれた大国の指導者が、犬の喧嘩よろしく睨みあっているのである。どんな災厄が地球を襲わないともかぎらない。物騒な時代に我々は生きているのである。





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