
(波図)
「波岸図」には先行作品がある。南宋の画家玉澗の「波岸図」である。玉澗の作品は、波と岸の図を一つの画面に描いていたが、将軍足利義政が二枚に切断し、それぞれを「波図」、「岸図」と呼んで、茶人たちが愛好した。雪村は、その切断された波岸図を参考にして、この作品を描いた。はじめから二点の絵としてである。
別々の絵ではあるが、相互に深い関連を持たせてある。波図のほうは、暗い背景から波の明るい部分が浮かび上がって見えるように描かれ、岸図のほうは逆に、明るい背景に黒い墨で崖に生える草樹が描かれている。その対比がこの作品を面白いものにしている。

(岸図)
波の描き方は、墨の白抜きを利用して、力強い感じがする。この波は、「風濤図」における波と同じ描き方だ。また、岸の描き方は、「つけたて」の技法を用いて、あっさりと描かれている。左右両幅のコントラストから、ひとつの悠然たる自然の趣を感じさせるように配慮されている。
(掛幅双幅 紙本墨画 各55.4×101.4㎝)
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