あひるの新年会

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毎年の恒例にしたがい、今年も新宿西口の居酒屋であひるの新年会を催した。寒風吹きすさぶ中会場に赴くと、すでにしずちゃんあひるとミーさんあひるが席についていた。簡単な挨拶をして部屋に入ろうとするとしずちゃんあひるに制止された。あなた中国には行ってませんか、と言うのだ。いや、行ってませんよと答えると、では中にどうぞという。いま中国で大流行の新型肺炎を心配しているのだ。その心配は家人もしていて、小生が家を出る時には大きなマスクを二枚も持たされたほどだ。

引き続いてやってきた少尉あひるとよこちゃんあひるもしずちゃんあひるによるチェックを受けた後部屋に入ってきた。いまちゃんあひるは遅れてくるそうなので、とりあえず五羽で乾杯しましょうということになり、皆で生ビールを飲んだ次第。最初の話題は当然のように新型肺炎のこと。中国ではたびたび肺炎騒ぎが起るけど、これは中国人が好んで野生動物を食うからだ。今回の騒ぎも蝙蝠が第一原因で、蝙蝠から他の動物たとえば蛇に伝染し、その蛇から人にうつったそうじゃないか。それにしても大変な感染力らしいから、世界中が大騒ぎになるのも無理はないね。

このメンバーではミーさんあひるが最年長ですが、昨年は傘寿を迎えたという。来年は卒寿を迎えるわけですね。長命なによりです。顔の色つやも若々しいし、とてもその年には見えません。髪の毛も黒々としている。なにか特別のコツでもあるのですか。そう聞いたところが、あえて生きることにこだわらないということでしょうか、とのこと。しずちゃんあひるはそろそろ喜寿に届く年齢ですが、彼女も又若々しい。来年も今の仕事を続けることになったのだそうだ。一方、よこちゃんあひるは完全に引退し、悠々自適の老後を送ることにしたという。まだ古希にならないのにどうしておやめになるの、としずちゃんあひるが聞くと、最近通勤列車が殺人的な込み具合になって、とても耐えられないのだという。かれが使っているのは都営三田線だが、三田線沿線はマンションラッシュで人口が爆発的に増え、そのあおりで通勤地獄になったのだという。

少尉あひるは、最近体調を壊すことが多くて、昨年の新年会にも出られなかったのですが、今年は是非にでもと思って、自分に鞭うって出てまいりましたという。そういえば、多少やつれ気味に見える。一人暮らしだから、気持ちも落ち込みがちです。ひとつうれしいのは、孫ができたことです。息子たちが不妊治療をしてもなかなかできなかったので、自分が息子の代わりに子どもを作ってやろうかと思ったくらいなのですが、なんとか子どもが生まれて来て、私としてもうれしいのです、と殊勝なことを言う。

そのうちいまちゃんあひるもやってきた。かれは近所の事業所で仕事をしているので、その都合で遅れたという。そのいまちゃんあひるに、同じ場所で仕事しているのに、なかなか顔を合わせる機会がないわね、としずちゃんあひるが言ったところ、先日あなたをお見掛けしましたよ。声をかけようとしましたが、大勢の女性が一緒でしたので遠慮しました。そういまちゃんあひるが答える。遠慮するなんて水臭いじゃありませんか。是非声をかけてくださいな。

ともあれ今宵の参加者六羽全員が揃ったところで改めて乾杯。この会も随分長くなりましたね。この会が始まったきっかけは、二十年以上前に北海道旅行をしたことだから、それから四半世紀も続いたわけです。この調子だとあと十年以上は続けられるのではないかしら。その時にはミーさんあひるが白寿を迎えていよいよおめでたい。

昨年はどこかへ旅行なさいましたか、としずちゃんあひるが聞くので、淡路島に行って猿と遊んできましたと答えた。あら、お猿さんが淡路島にもいるのですか、というので、小生は淡路島の猿センターで撮影した動画映像を、小生のホームページから呼び出して紹介して見せた。それを見たしずちゃんあひるはいたく面白がってくれた。淡路島に行く前には熟女の皆さんと法師温泉につかりにいきました。高峰三枝子と上原謙が一緒に入浴している図柄のポスターで有名になったところですよ。僕が入浴しているときにも、何人かの若い女性が一緒に入っていました。おそらく僕がよぼよぼの老人だと思って警戒しなかったのだと思います。実は熟女たちに一緒に入ろうよと誘ったのですけれど、そちらには警戒されて一緒に入ってもらえませんでした。

よこちゃんあひるはあいかわらずスマートですけれど、絵描きあひるさんはずいぶんふくよかになりましたね、というので、いやはやこんなに腹が出てしまいました。おかげで背広は着れなくなるし、上から見下ろしても、腹が邪魔してあそこが見えない始末です。そう言ったところが、あらそんなもの見えなくたってさしつかえないでしょ、とあきれられた。

ところでここ二年間旅行をしてませんけれど、今年は是非したいわね、としずちゃんあひるが言う。そこでどこがいいかとか、いつがいいかしらとか色々意見が出た。旅行というのは計画のプロセスにも醍醐味があるものだ。そこで出された有力意見は、いまテレビで話題になっている明智光秀ゆかりの城廻りでもしたらどうかというものだった。福井の一乗谷とか越前大野城とか。城廻りをするかたわら温泉につかるとか。城崎温泉にはもう一度行ってもいいですね。

飲み物は生ビールのあと黒霧島のお湯割りを飲んだ。食べ物はしずちゃんあひるにおまかせしたところ、十種類以上の皿が出てきた。小生が軟骨を二つ頼んだら、串焼きではなく、山盛りのフライが二皿も出てきたのだった。まあいいか。

さんざん飲んで食って一人当たりの料金が3200円。随分やすくあがったね。その差額でお茶でも飲みましょうということになって、西口の地下道にある喫茶店ルノワールに入り、コーヒーをすすりながら歓談の続きをした次第だった。





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