ローマ環状線、めぐりゆく人生たち:ジャンフランコ・ロッシ

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2013年のイタリア映画「ローマ環状線、めぐりゆく人生たち(Sacro GRA)は、ローマ環状線の周辺で暮らす人々の日常を描いたドキュメンタリー映画である。ローマ環状線というのは、その名の通りローマ市街の外郭を環状に通る高速道路のこと。地図で見るとローマの町をすっぽり包み込むようにして通っている。市街に接するところもあれば、田園地帯の只中といったところもある。この映画を見ると、そうした田園地帯を走る場面も出て来るので、単なる都市高速というのでもなさそうだ。

映画は、高速道路そのものというよりは、その周辺に暮らす人々の日常生活を描いているので、ストーリー性はまったくない。それでいて整合性のようなものを印象づけているのは、高速道路沿いの生活という統一したモチーフに導かれているからだろう。

そうした日常生活は、川でうなぎをとる漁師だとか、アパートから顔を出しながらつぶやき続ける老人とか、おかまたちとか。そのおかまの一部は高速道路で客を引いているが、これは危険なことなのでやめたほうがよい。なお、売春婦たちがアッピア街道で客を引く場面は、フェリーニの映画「カビリアの夜」で見られた。

そのほか、雑木林のなかで害虫のゾウムシの研究をしている学者らしき人とか、サンタマリアの祈りをする人々とかも出て来る。高速道路で働いている人も勿論出て来る。たとえば救急隊員だ。かれらは高速道路で事故があると、現場に直行し、負傷者に応急措置を施したりする。この映画の冒頭は、そんな救急隊員たちの活躍ぶりを写すことろから始まるのだ。

そんなわけで、高速道路沿いに暮らす人々の生活ぶりが淡々と描かれるだけなのだが、どこかリズム感があって、なかなか見どころに富んでいる。この映画は、ドキュメンタリー映画としてははじめて、ヴェネチアで金獅子賞をとったそうだ。






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