岸和田少年愚連隊:井筒和幸

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井筒和幸の1996年の映画「岸和田少年愚連隊」は、「ガキ帝国」同様少年の暴力を描いたものだ。ただし在日コリアンは出てこない。日本人の少年同士の暴力沙汰がもっぱら描かれている。その少年というのが中学生なので、見ているほうは途方にくれるところがある。中学生が徒党を組んで、やくざまがいに喧嘩をする。それも半殺しにするような派手な暴力沙汰だ。しかも、その中学生の男女が、セックスまでするとあっては、日本の未来が暗く見えて来るほどだ。

「ガキ帝国」では、お笑いコンビの紳助・竜介が主演を張ったが、この映画でもお笑いコンビが主演を張っている。ナインティナインの岡村隆史と矢部浩之だ。岡村はNHKのバラエティ番組「チコちゃん」で馴染だ。もともと童顔だが、この映画の中では、まだ二十代半ばということもあって、一層童顔に見える。

筋らしきものはない。子どもの頃からの喧嘩馴染みが、高校生になってまで喧嘩を続け、そのうち主人公の喧嘩相手が鑑別所に送られる。主人公たちも、学校を退学になって、社会からドロップアウトする過程を、映画はほとんど脈絡もなく描き続ける。とにかく彼らは、若いということもあって、エネルギーに溢れており、それを喧嘩につぎ込むから、すさまじいことになる。多少痛めつけられたくらいではへたらない。だから毎日のように喧嘩をする。

喧嘩の舞台は学校内部にも及ぶ。学校の教員は生徒たちの喧嘩を制御できず、好きなようにやらせておく。一時、荒れる中学校というのが話題になったが、この映画の中の中学校は、それの典型だと考えられる。そういう意味ではこの映画には、ある種の社会的な視線を感じることができるかもしれない。

なお、この映画にはシリーズものの小説の原作がある。映画もそのシリーズに従って、以後、他の監督たちによって次々と映画化された。もっとも評判が良かったのは、第一作目のこの作品である。





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