バッカス:カラヴァッジオの世界

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「バッカス」は、若者をモチーフにしたカラヴァッジオ初期の風俗画の仕上げのような作品である。これ以後カラヴァッジオの作風は、風俗画から宗教画の方へと移っていくのである。この「バッカス」は、デル・モンテ枢機卿が、友人のトスカーナ大公にプレゼントすることを目的に描かせたもの。バッカスをモチーフにしたのは「病めるバッカス」以来のことだが、この二つを比べて見れば、長足の進歩を見て取ることができる。

少年は半裸の姿で、こちら側に流し目を送っている。左手でワイングラスを抱え、右手では着物の帯を解こうとしている。同性愛を強く感じさせる仕草である。これは、注文主の趣味を勘案したものなのか、あるいはカラヴァッジオ自身の同性愛を表現したものなのか、よくはわからない。いずれにしろエロティシズムを感じさせる作品だ。

若者が頭に巻き付けているのは、オリーブの葉で、バッカスのトレードマークを意味しているが、それ以外に、これがバッカスだと示す要素はない。そのオリーブの葉も、ごてごてとまとわりついている印象だ。もっともこの葉っぱを始め、植物の描き方は、本物を見ているようにリアルである。

左端のワインの入ったフラスコをよく見ると、カラヴァッジオ自身の顔が映っているという。写真でははっきりとしないが、実物の前に立つと、見まがうことがないそうだ。

(1597年頃 カンバスに油彩 95×85㎝ フィレンツェ、ウフィツィ美術館)






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