コロナ後の世界:ウィルスとの共存と世界秩序の変換

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コロナ騒ぎがこれほどまでに大きくなったのは、やはりなんといっても欧米を巻き込んだかたちの規模の大きさによるのだろう。今回は、ヨーロッパやアメリカでも感染が拡大し、大勢の人間が死んだ。もしこれが中国とかその周辺の国にとどまっていたら、こんな騒ぎにはならなかっただろう。パンデミックという言葉が使われているが、これは今から百年ほど前に起きたスペイン風邪以来のことだ。スペイン風邪では、ヨーロッパを中心にして、数千万人から一億人ほどが死んだと言われる。その結果、第一次大戦の痛手もあって、ヨーロッパの地盤は低下し、アメリカが世界の覇権を握るきっかけになった。

スペイン風邪は、第一波よりも翌年の第二波のほうが被害が大きかった。今回のコロナウィルスも、それと同じことになる可能性は十分にある。ウィルスとの戦いが収束するためには、国単位で言えば、国民の八割が免疫を獲得することが条件だと言われている。それを集団免疫というそうだ。それには、ワクチンの開発のほかに、国民の多くが実際にウィルスに感染し、それを通じて集団免疫が広がるというパターンもある。しかしこれは非常にリスクが大きい。できれば、ウィルスの感染をなるべく緩やかな速度に抑え、時間をかせぐことで、ワクチン開発のための時間的な余裕を確保するのがのぞましい。

その場合に、ウィルスの根絶を目指すのは、あまり賢いやり方ではないらしい。ウィルスというものは、宿主がいなければ生息できないわけで、無理に人間を殺すようなまねはしない。ところが人間のほうで無理にウィルスを根絶しようとすると、ウィルスは生き残りをかけて進化するという。つまり人間とウィルスとが、真正面から衝突するわけである。それよりも、ウィルスを敵と決めつけずに、ゆるやかな共存を目指したほうが賢いという意見もある。

今回のウィルス騒ぎは、グローバリゼーションによって地球が狭くなったことに大きな原因がある。人の盛んな移動が、瞬く間にウィルスを世界中に拡散したわけだ。こうした傾向は、グローバリゼーションの流れを前提とすれば、今後ともずっと続いて行くものと思われる。新型のウィルスは、過去の例からして、だいたい十年単位で発生しているから、今後は十年ごとに今回と同じようなパンデミックが起きる可能性がある。それをどのようにコントロールしていくか、人類全体の共通課題になるだろう。

スペイン風邪は、ヨーロッパからアメリカへの覇権の移動というかたちで世界秩序に変換をもたらしたわけだが、それ以前の最大のパンデミックであったペストも世界秩序に巨大な影響をもたらした。このパンデミックによって、それまで秩序のよりどころであった教会への人びとの信頼感が大きく崩れ、それが宗教改革や新たな国民国家の誕生を促したのである。だから近代のヨーロッパを中心とする世界秩序は、ペストというパンデミックが生んだものともいえる。

そこで、ペストやスペイン風邪に続く最大規模のパンデミックである今回のコロナ騒ぎも、今後の地球社会に甚大な影響を及ぼすだろうと、世界中の人々が予測している。先般は、日本のNHKも、コロナ後の社会と銘打って、コロナがどのようなインパクトを今後の地球に及ぼすのかを予測していた。NHKが紹介していた意見は、アメリカの政治学者フクヤマによるものと、フランスの思想家アタリによるものだったが、フクヤマは、今後グローバリゼーションのマイナス面が強調され、地球は国家同士が反発しあう、ある種の部族社会に逆戻りするのではないかと、悲観的な見通しを表明していた。一方アタリのほうは、グローバリゼーションの流れはとめられないと前提したうえで、諸国家が地球社会の一員としての自覚をもって協力し合わねばならないという、多分に希望的色彩の強い意見を述べていた。

小生としては、やはりグローバリゼーションの流れはせき止められないと思う。そういう趨勢を前にして、今回のように諸国家がそれぞれ国境を閉じて、自分の国のことだけを考えているようでは、地球は健全な方向を歩めないだろうと思う。





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パンデミックは歴史上激変をもたらしてきました。我々は大きな歴史の変革のさなかにいるのかもしれない。ゆるやかな川の流れが、急流に転じたのかもしれません。歴史を動かす力はなんであろうか。貧困からの脱却を求めるエネルギーか、自由を希求する運動か、格差是正を求める力か、多分人間が人間として生きようとする力であるまいか。
グローバリズムこそが、平等で豊かな世界を作るというのは神話ではなかったのか、錯覚ではなかったのかと世界は気づき始めた。グロバーリズムは人種の差別をなくし、多様性を受け入れ、人類は楽しく共存できると信じさせてきた。グローバリスムが格差を生み出し、移民を受け入れた社会には、人種差別と格差を増大させることを眼の前に現出させた。つまり、人間はそこまでには成熟していなかった。この反動は、トランプのような自国第一主義のナショナリズムの台頭をよび、世界の流れになり始めた。
 他方中国は一帯一路のグローバリズムを無理やり展開させている。このグローバリズムは、きしくも共産党の支配する中国の国益にかなっている、世界の覇権をめざすための手段として利用している。金と人間を投入し、巧みな情報戦を駆使し、諜報活動によりその国の上層部に浸透を図っている。
 多くの死者をだしたイタリヤやスペインはEUの厳しい財政規律のため、医療費を切り捨てていた。そこにつけ込んだ中国の資本と人間が浸透していた。今回の武漢ウイルスの侵入により多くの死者をだしたのではないだろうか。EUのグローバリズムのほころびを見ることになった。
 コロナ後の世界は、アメリカと中国が覇権を競う世界が鮮明になるだろう。中国内の不満分子は徹底的に抑圧することになるだろう。香港の一国二制度は破綻し、自由な経済活動も人権の自由も制限されることになった。多くの香港人は海外へ移住をはじめるだろう。
 政府を、権力を批判する自由は資本主義には必要な概念ではなかろうか。世界は、否応なく、自由を抑圧する国家群と自由を守ろうとする国家群に分断する方向に向かうことになるだろう。経済のためとして、人権を抑圧し、民族浄化をすすめ、宗教を弾圧し、はては、臓器刈りを行う国と共存できるのだろうか?これらのことを知ってしまった世界の人々は、共存を良しとするのであろうか。今起きている黒人の問題は、人種差別という人間の本質を問われている。アメリカやヨーロッパはどう対応していくのだろう。
 ジャックアタリがいう利他主義は、大乗仏教の利他とは随分ちがうと思われるが、この利他主義は共産党の支配する中国には受け入れられることはない。アタリのいう利他主義は最善の合理的利己主義にほかならない。利他的であることは、ひいては自分の利益となる、ということのようですが、中国では、この倫理的な経済活動を受け入れることは不可能のように思います。
 全く異なった価値観を持つグループは相容れることはないように思います。世界が共存できるようになるには、かなりの時間が必要だろうと思います。そう、新しい価値観の登場が待たれます。今までの価値観を統合し、止揚するのか、あるいは遥かに凌駕する考え方が生まれるのか・・・

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