明治風俗十二か月その一:鏑木清方

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鏑木清方は昭和十年(1935)に、三越デパートで「明治風俗十二か月」と銘打った個展を催した。そこに清方は、月次風俗画十二点を出品したのだった。月次の風俗画は、室町時代からの伝統で、明治以降も浮世絵カルタなどの形で存続していたが、それを清方は大画面で展開してみせた。モチーフは、明治三十年頃の中流階級の生活ぶりだと、清方自身が語っている。

各絹本着色の軸装仕立てで、サイズは各113.5×30.2㎝である。

上の絵は一月。カルタと題している。画面やや下方に、カルタを整理する婦人。おそらく客を招いてカルタをするつもりであろう。その背後には羽根つきで遊ぶ少女。夫人の妹だろう。児輪に結った髪に、振袖を着ているのは、正月らしい華やかさだ。手前の福助は、五世中村歌右衛門の人気盛だそうだ。

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二月は梅屋敷。亀井戸の梅屋敷を背景にして、黒羅紗吾妻コートを着た夫人が描かれている。夫人が手にもっているのは、御高祖頭巾だそうだ。梅の木は、夫人の背後に薄く描かれ、その枝先に開き始めた梅の花が見える。

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三月は稽古。日本橋の仕舞屋で、唄をおさらいする少女。三味線に合わせて歌っているのは、清元かなにかであろう。障子の向こうには、これも梅の花が咲いているのが見える。






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