朝夕安居:鏑木清方

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「朝夕安居」は昭和二十三年の日展に出展したもの。三つの巻物の形にしてあり、それぞれ朝昼夕の庶民の暮らしぶりが描かれている。その生活ぶりというのは、明治二十年代の東京の庶民の暮らしぶりを回想したものだという。現実の東京の庶民は、敗戦後の混乱の中で、その日暮らしに追われており、とても安居とはいかなかった。

朝の巻には、車を引いた煮豆屋から、朝餉のおかずを買い求める主婦や、共同井戸から水をくみ上げる人々が描かれており、昼の巻には、百日紅の木の下で一休みする行商人が描かれている。この行商人は風鈴を売り歩いているようだ。

上の絵は、夕の巻の右半分。庭先で行水する女性とか、そのとなりでなにやら手仕事にいそしむ女性が描かれている。左半分には、「むぎゆ」と記した建行灯の辻の茶店。客たちが床几に腰かけて寛いでいる。

(1948年 紙本着色 46.0×306.0㎝ 鎌倉市)






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