櫻の園:中原俊

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中原俊の1990年の映画「櫻の園」は、女子高生たちの青春を描いた作品。出演した俳優のほとんどはオーディションで選ばれた少女たちとあって、みな幼いところを感じさせるが、中には大人びた者や、不良っぽい者もいる。その彼女らが、精いっぱい声を張り上げながら、青春を謳歌するというのが、この映画の見せどころ。少女の当事者にも受けそうな雰囲気の映画である。

櫻の園とは、チェーホフの有名な戯曲だが、この映画はその劇を演じようとする女子高生を描いている。桜花学園という女子高では、毎年の卒業記念に、三年生がこの劇を披露する習わしになっている。今年もその習わしどおり、桜の咲く季節に演じられる予定だったのだが、トラブルが起きて、中止の危機に直面する。演劇部の部員が喫茶店でたばこをふかして警察に保護されたことで、学校側が事態を重く見、演劇部による劇の披露を中止させようという声が起ったのだ。部員達には危機意識が生じたが、色々な困難を乗り越えて、演劇は実現することとなり、彼女らは晴の舞台を披露するというような内容である。

筋書はごく単純だが、映画の見どころは、なんといっても少女たちの表情やら行動だろう。表情が多彩だし、行動もきびきびしている。また、思春期の少女ならではの悩みなども共感を持たされる。性の悩みとか、同性愛へのあこがれなどは、この時期の少女に特有のものだろう。性の悩みはセックスへの怖れといった形をとることもある。未経験な少女たちは、セックスを苦痛なものと考えているようで、身体が引き裂かれるのではないかと恐れるのだ。

そんなわけで、この映画は少女の魅力から成り立っているようなところがある。原作は少女漫画だということだ。なお、中原俊はポルノ映画を多く作っているが、この映画にはポルノを感じさせるところは全くない。





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