
「セビーリャの水売り」と題したこの作品はセビーリャ時代を締めくくるもの。かれはこの作品を土産にしてマドリードに赴いた。それに先立ちベラスケスは、1622年4月に絵画鑑賞の旅の途次初めてマドリードに赴き、そこで旧知のフォンセーカの歓待を受けた。フォンセーカはセビーリャの出身で、師パチェーコと懇意だったため、ベラスケスとは縁があったのである。
フォンセーカのもてなしに感激したベラスケスは、翌23年に再びマドリードを訪れた際に、この作品を彼への手土産に持参したのである。なお、この訪問の際に、ベラスケスはフォンセーカの肖像画を描いたのだが、それが国王の目に留まって、宮廷画家になるきっかけを作るのである。
この作品も一応ボデコンということになっている。厨房を描いたものではないが、日常的な生活の一コマを捉えた点は、ボデコンに通じるものがある。モチーフの水売りは、当時セビーリャなどアンダルシーア地方でよく見られた光景だったという。
画面手前に水を入れた大きな甕を置き、男がそこからくみ取った水を入れたグラスを少年に差し出している。グラスの底には無花果の実が置かれているが、これは塩抜き用だそうである。前面の男から背後の男に移るにつれて、次第に暗くしていくことで、画面に奥行きをもたらしている。明暗による遠近法である。
(1623年頃 カンバスに油彩 106×82㎝ ロンドン、ウェリントン卿美術館)
・美術批評
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