ヨセフの長衣を受け取るヤコブ:ベラスケスの世界

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「ヨセフの長衣を受け取るヤコブ」は、「ウルカノスの鍛冶場」と並んで、ローマ滞在中に制作した二つの大作のうちの一つ。旧約聖書の創世記に取材した作品だ。ギリシャ神話と聖書との違いはあるが、どちらも物語を視覚化したもので、ボデゴンや肖像画を描いていた初期のベラスケスからの飛躍を感じさせる作品である。

ヤコブはイサクの息子(アブラハムの孫)で、イスラエル人の祖先とされる人物だ。12人の息子がいて、それぞれイスラエルの12の部族の祖先となった。ヨセフは11番目に生れた子で、ヤコブはこの子を非常に深く愛していた。それをほかの兄たちが妬んで、穴に突き落としたうえで、隊商に売り飛ばしてしまった。その後、兄たちは、ヤコブの長衣に羊の血を塗って、それを父親のヤコブに見せた。

この絵は、その瞬間を描いたものだ。右端のヤコブに向って、兄たちが長衣を示している。それを見せられた父親のヤコブは、両手を開いて驚愕の表情を見せている。兄たちの表情には、しらばくれたような開き直りが感じられる。それを見透かしたように犬が吠える。

構図に無理はないが、やや平板に見えるのは、遠景の風景が申し訳程度に描かれているからだろう。

(1930年頃 カンバスに油彩 223×250㎝ エル・エスコリアル修道院)






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