偉大なるアンバーソン家の人々:オーソン・ウェルズ

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1942年のアメリカ映画「偉大なるアンバーソン家の人々(The Magnificent Ambersons)」は、「市民ケーン」に続くオーソン・ウェルズの第二作である。「市民ケーン」では、新聞王といわれたウィリアム・ハーストをモデルに、アメリカの俄成金を描いたものだったが、第二作目もやはりアメリカの俄成金がテーマとなっている。一時は豪勢を極めた俄成金の一家が、あっけなく没落する過程を描く。それにアメリカ人流儀の恋がからむというわけだ。

アンバーソン一家は、アメリカの地方都市の名家として、豪勢な屋敷にくらし、町の人々の畏敬を集めている。そこに一人の娘が嫁入りするのだが、その娘を心から愛している男がいて、その男がアンバーソン家の没落に立ち会うようなかたちでかかわるところを描いている。その男を、市民ケーンで主役を演じたジョゼフ・コットンが演じているんだが、これがなかなか渋い。かれは、自動車の発明家ということになっており、もしかしたらヘンリー・フォードをイメージしているのかもしれない。だとすれば、舞台となった地方都市とは、今世紀初頭のデトロイトかもしれない。

男は、失恋に傷心してしばらく町を去っていたが、やがて成長した娘を連れて、町に戻ってくると、かつての恋の続きに夢中になる。相手の女にも成長した息子がいて、二人の子どもはすぐに仲良くなるのだが、男が母親を奪おうとすると思いこんだ息子は、男を避けるように、母親と共に、世界旅行に旅立ってしまう。母親は息子を溺愛していて、その意向には逆らえないのだ。

母親と息子は数年後に戻って来るが、その頃にはアンバーソン家はかつての勢いを失い、母親が死ぬと急速に没落する。地方の名家とは言え、俄成金であり、ヨーロッパの貴族のような厚い地盤をもたないので、なにか不都合なことがおきると、没落するのは早いのだ。それはアメリカの歴史の底の薄さを物語っている。そんなふうなメッセージが伝わってくる映画である。






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