
「道化カラバシーリャス」と題するこの絵も、トーレ二階第一室を飾っていた作品の一点。カラバシーリャスとは、ヒョウタンを意味するスペイン語カラバスから派生した綽名であり、本名はわかっていない。経歴としては、枢機卿フェルナンドに仕えたあとで、フェリペ四世の下僕になった。
画面には、綽名のとおりヒョウタンが二個置かれている。そのほか、前面にワイン入りのグラスが置かれているが、これはその日のごちそうの名残か。面白いことに、かれへの毎日の食事の内容がことこまかく記録されているといい、それを読むと、かなり優遇されていたことがわかる。国王お気に入りの道化だったのだろう。
その道化のカラバシーリャスが、揉み手をしながらせせらわらいを見せている。足の組み方なども、卑屈さを感じさせる。カラバスつまりヒョウタンは、間抜けの象徴だったようだ。
道化とはいえ、一人の人間の瞬間の表情を、あたかもスナップ写真のようにリアルに捉えたこの作品は、ベラスケスの人間観察の奥義を感じさせる。
(1639年頃 カンバスに油彩 106×83㎝ マドリード、プラド美術館)
・美術批評
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