入院拒否に刑罰は片手落ちだ:菅政権のコロナ改正法案

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菅政権がコロナ対策の推進を目的として関連法案の改正を打ち出した。目玉になるのは、事業者がお上の命令に応じなかった場合の過料と、入院を拒んだ者への刑罰だ。前者の過料については、小生にも理解できないわけではないが、後者の刑罰については、全く賛成できない。

過料は行政罰であって、政府が決めたルールを守らない者に対して課せられるものだ。そのルールに国民大多数が賛意を表している場合には、ルール破りに行政罰を課すことには一定の合理性がある。しかし、入院を拒否した者に刑事罰を科すことには全く合理性がない。

入院を拒否した者に刑事罰を科すには、そもそもすべての国民に入院の機会が平等に保障されており、国民全体がそれを選択することに合理性がある場合に限られる。ところが現在の日本では、コロナにかかったといって入院できるとはかぎらないし、第一検査も受けられないというのが現状だ。そういう情況の中で、ある特定の人間だけを、入院を拒否したという理由で罰することに合理的な根拠はないと言うべきである。入院できるとは限らない状態で、そのような刑罰を科すのは片手落ちというものである。

なんでも力づくで国民を従わせようという菅政権の体質があらわれたということではないか。菅政権がまずやるべきことは、入院を拒否した者を罰することではなく、必要な者は誰でも入院できるような体制を整備することだ。

歴代の自民党政権が、医療費の削減とか行政改革を理由に、保健所の削減や医療資源の縮小を進めてきたことは周知のことだ。それが今日コロナによる深刻な医療崩壊が懸念されている事態の直接的な原因だ。先日神奈川県知事は、入院できずに放置されて死亡した事例を前に、これは医療の限界だから仕方がないと開き直っていたが、医療の限界を設定してきたのはほかならぬ自分自身だという自覚を持ってもらいたいものだ。その上で政策に反省を加え、今後の医療体制の充実に努めてもらいたいものだ。





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