ならず者は去った:トランプの退場

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世の中のルールや人間の倫理的感情を一切無視して、自分の個人的な利益のためにはどんな悪事も躊躇わない人間をならず者と定義するなら、トランプはならず者そのものだった。この男は、アメリカ大統領という地位を利用して、自分の個人的な利害のために悪事の限りを尽くした。それを大多数のアメリカ国民から非難されて、大統領の地位から追われると、最後まで抵抗し、あまつさえ暴力によって自分の地位を保とうとまでした。人類史上希に見るならず者であり、近年これに匹敵するのはわずかにヒトラーだけであろう。

そのトランプが表向きの舞台から去った。これまでのかれの行動振りからして、クーデタとか、あるいは内乱といった事態も考えられないわけではなかったが、なんとか最悪の事態は避けられた。もしトランプが、支持者を煽り続けていたら、ひどいことになったかもしれない。その可能性は十分予想されていたのであり、そのことから州兵など2万5000もの武装警備要員が動員され、不測の事態に備えたほどだ。それがあっけなく惨事なしに終わったのは、おそらくトランプがヒトラーほどの大物でなかったからだろう。ヒトラーほどの大物なら、最後まで、自分の命をかけて、権力の座にこだわったことだろう。そうしなかったのは、トランプが臆病者だったからだろう。

トランプが去っても、トランプが燃え上がらせた火はそう簡単には消えない。トランプの登場は特異な現象ではなく、大多数のアメリカ人の政治意識を反映したものだった。その政治意識とは、白人の間で共有されている白人至上主義だ。アメリカの白人たちは、これまでアメリカ社会における多数派として、国の方向を牛耳ってきた。ところが近年その優越的な地位が脅かされ、そのことに脅威を感じる白人たちが圧倒的な割合を占めるようになった。白人たちの危機感は、黒人大統領オバマの登場によって沸点に達した。その危機感が白人至上主義を臆面もなく振りかざすトランプを政治の表舞台に押し上げたのである。その点は、ワイマール時代のドイツ人のドイツ民族の誇りを取り戻したいという願望がヒトラーを表舞台に押し上げたのと共通する。

そんなわけだから、今後しばらくの間は、アメリカは政治的な混迷から抜け出せないだろう。バイデンでは、アメリカ国民の間に生じた断絶と対立とを解消させることはできない。年をとりすぎているし、認知機能の衰えも指摘される。直面する激務に耐えられるかどうか、はなはだ心もとない。バイデンの仕事は色々あるだろうが、とりあえずはトランプの政治的な影響力を無化することだろう。トランプを野放しにしていては、アメリカにとって脅威になることは明らかだ。二度と政治家として影響力を振るえないようにする必要がある。すくなくとも、監獄にぶち込んで、民衆を扇動できなくなるように始末をつけることが必要だ。トランプを監獄にぶち込むに足る材料は山ほどある。あの伝説的なギャング、アル・カポネでさえ脱税容疑で監獄にぶち込まれたのだから、トランプをぶち込めないわけはない。





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