渓山細雨図:渡辺崋山の絵画世界

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崋山は南画風の山水画にはあまり関心を寄せてはいなかった。風景は描いたが、南画風には描かずに、写実を心掛けた。「渓山細雨図」と題するこの絵は、崋山としては数少ない南画風の山水画である。

崋山ならではの、工夫もみられる。遠景の山は南画風だが、手前の人家は、上から俯瞰した構図で、遠近感を意識したものになっている。

高山を背景に流れ下る川は、渓流というより、ゆったりと流れる水のように見える。その水から立ちのぼった煙のようなものが、細雨をあらわしているのだろう。「細雨煙の如し」という慣用句を、視覚的なイメージとして表現したもののようだ。

(天保九年 絹本着色 97.8×35.1㎝ 静嘉堂文庫 重美)






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