孔子像:渡辺崋山の絵画世界

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崋山は儒者としての教育を受け、また終生儒者たちと交わったので、孔子に親しんだことはいうまでもない。そんな彼が、求めに応じて描いたのが、この孔子像である。依頼してきたのは、田原藩の藩校成彰館。納入された作品は、藩校の講堂に掲げられた。

崋山は、この作品を、自分が描いたのではなく、田原藩主三宅康友の四男友信の筆になるものとした。右下の墨書に「天保戊戌五月念三日後学三宅友信薫沐拝写」とあり、友信の印が押されている。なぜそんなことをしたのか。詳しくはわからない。

この絵の中の孔子は、聖人というよりも、野武士のような風情を感じさせる。これには手本があって、唐代の画家呉道子の木版画によったという。唐代のものを選んだのは、なるべく孔子の生きた時代に近いものを求めたからだろう。おそらくその手本に、孔子が荒々しい風情に描かれていたのであろう。昌平黌の敷地内にある孔子像のほうは、いかにも聖人然とした風貌に作られている。

(天保九年 絹本着色 138.8×81.3㎝ 田原美術館 重文)






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