松に鷹図襖:曽我蕭白の世界

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「松に鷹図襖」は、伊勢の永島家に伝わってきた44面の襖絵の一部。五面分を占めている。画面左側に松の樹を配し、その枝の先端、丁度全画面の中央にあたるところに鷹を配している。鷹は背後に鋭い視線を向け、その視線の先には断崖らしいものが見える。かなりなダイナミズムを感じさせる構図である。

ダイナミックなのは、構図だけではない。筆致の勢いもダイナミックである。あたかも一筆描きのような荒々しいタッチで松の枝などを描いている。とくに鷹がとまっている枝などは、ざっくりとした筆致で、筆を叩きつけたような印象を与える。松の部分が粗放なのに対して、鷹は実に丁寧に描かれている。

つまり粗放さと優雅さが一つの作品に共存しているわけだ。それでいて猥雑さを感じさせず、安定した雰囲気に包まれているのは、空間処理の賜物だろう。モチーフが大きな空間の中に配されているおかげで、モチーフと空間との間に絶妙な対比が生まれ、それがモチーフにひそむ粗放さと優雅さとの対立を帳消しにしているのだ。

(1764年頃 紙本墨画 襖五面各171.5×86.0cm 三重県立美術館)







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