みつばちの大地:蜜蜂死滅の原因を追う

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2012年のドイツ映画「みつばちの大地」は、蜜蜂の生態と人間とのかかわりを描いたドクメンタリー映画である。この映画が作られた数年前、おそらく2006年頃から、蜜蜂の世界規模での消滅が問題となっていた。それは2012年にも未解決であったから、このドキュメンタリー映画は、蜜蜂消滅の原因に焦点をあてながら、蜜蜂が人間にとって持つ意味を考えようとするものである。

映画の中でもアインシュタインの言葉として紹介されているとおり、密蜂が死滅すれば人類も四年以内に絶滅すると言われている。それほど蜜蜂は、人類の生存にとって不可欠の存在なのだ。それが死滅に向って進んでいるわけだから、深刻な懸念を抱かざるを得ない。この映画にはそうした懸念が色濃く込められている。

映画は、蜜蜂の生産者と利用者の、それぞれの視点からの蜜蜂消滅への懸念を追及している。生産者を代表してドイツ南部の山岳地帯の蜜蜂ブリーダー、利用者を代表してアメリカの養蜂農家及び果樹生産農家が紹介される。蜜蜂はいまや、自然にではなく人工的に作り出されている。それを買い受けた養蜂農家が、蜂蜜の生産を兼ねて、果樹・野菜農園に蜜蜂による受粉ビジネスを請け負っているというわけである。

蜜蜂消滅の危機は、まず養蜂農家を襲った。それについては、2006年頃から問題視され、この映画が作られた2012年になっても未解決だった。原因を追究する動きが世界的に広まったが、いまだに特定されていない。殺虫剤など農薬の副効果、ダニや寄生虫によるウィルスの蔓延、その他色々な原因が調べられた。だがどれも決定的な原因とはいえなかった。結局、単一の原因ではなく様々な原因の複合効果だろうというのが、この映画の中での中間結論のようなものになった。

映画はオーストラリアや中国での事情も映し出す。中国では、蜜蜂がいなくなってできた穴を人間が埋めようとしている。つまり人力で受粉作業をするのである。一方オーストラリアでは、ストレスに強い新しい品種の開発が進んでいる。それは殺人バチといわれて、人間にとっては有害なのだが、ストレスに強い特性があるので、今後の蜜蜂消滅の波を乗り切れる可能性が高い。人類はそれにかけざるを得ないといったメッセージが伝わってくるのである。

蜜蜂は五万匹で一つのコロニーを作る。女王蜂は、毎日2000個の卵を産み、それに対応して2000匹の蜜蜂が死んでいる。単純に計算して、25日でワンサイクルになる。実際蜜蜂の固体の寿命は四週間ほどで、このサイクルに見合っているのである。映画はその蜜蜂を、人間がブリーディングする様子とか、蜜蜂が農園で働く様子を描き出している。それを見ると、蜜蜂の生態とか、人間とのかかわりがよくわかる。なかなかよく出来たドキュメンタリー映画である。





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