風仙図屏風:曽我蕭白の世界

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「風仙図屏風」は、中国の伝説上の仙人陳楠をモチーフにした作品。陳楠は、旱魃に苦しんでいた人々のために雨を降らせた。その折に、龍を池の底から連れ出して、その龍に雨を降らせたという。この絵はその伝説を踏まえ、仙人が龍に向って命令する姿が描かれている。

しかし、その描き方がかなり奇妙である。龍は尻尾の部分だけが、竜巻を描いたような形で表現されている。その竜巻が風を巻き起こし、そのため、樹木が倒れそうである。つまり陳楠は雨を降らす仙人というよりは、風を巻き起こす仙人へと転化しているのである。

その仙人の描き方も奇妙である。龍に向って命令しているにかかわらず、その視線は龍のほうを向いておらず、背後でこけている従者らしいものへと向けられている。またその姿勢は、前のめりになっており、威風堂々と龍に命令するというよりは、腰が引けているようにも見える。

陳楠は鉄の杖を振り回しているが、鉄の杖はもともと鉄拐仙人の持ち物である。また、この陳楠には呂洞賓の面影も指摘できるが、それは風を通じてイメージが重なるからだろう。

(1764年頃 紙本墨画 六曲一隻 170×360cm ボストン美術館)






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