ブンミおじさんの森:タイ映画の世界

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2010年のタイ映画「ブンミおじさんの森」は、タイ映画としてははじめてパルム・ドールをとり、タイ映画を国際的に注目させた作品だ。それまでタイを描いた映画としては、ミュージカル映画「王様と私」がある程度で、その中のタイはエクゾチックではあるが野蛮な国民性として描かれていた。「ブンミおじさんの森」は、タイ人自身によって作られたタイ映画であって、タイを肯定的に描いている。

タイは仏教国であって、仏教の輪廻転生の思想を共有している。この映画には、そうした仏教的な思想が盛り込まれているようである。主人公のブンミおじさんは、前世には牛であったらしく、その牛の姿が映画の始まりを告げるのである。また、ブンミ叔父さんの死んだ息子は、猿の姿で父親の前に現われるのだが、それはかれが死後の世界で猿に変身したためであった。

そんなわけで、仏教的な世界観が随所に盛り込まれた映画である。腎臓の病で寿命の尽きかけたブンミおじさんの前に、死んだ妻の亡霊と猿に転身した息子の霊が現われて、かれを森の奥深くへといざなう様子を描く。その過程で、森の精霊の王女がなまずと結婚する話とか、死んだ妻の妹とその息子とがなにかとおじさんの面倒を見る様子が描かれる。

監督のアピチャートポン・ウィーラセータクンは、勃興するタイ映画を代表する人物で、タイ社会の実情を世界に向けて発信しているそうである。だがこの作品は、タイを好奇的に描いたとして、国内では強い批判を浴びたという。





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