ミレー「晩鐘」:バルビゾン派の画家たち

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「晩鐘(L'Angélus)」は、ボストンの美術収集家アップルトンの注文を受けて制作した。アップルトンは宗教的な雰囲気を込めるように言ったらしいが、かれはプロテスタントなので、精神的なものを求めたようだ。そこでミレーは、祈りという単純な行為を以て、その精神性を表現しようとしたのだと思う。この絵からは、庶民の敬虔な信仰心が伝わってくるのである。

アップルトンは結局この絵を引き取らなかった。そこでミレーは、1860年にバブル男爵に1000フランで売った。その後何度か転売され、1890年には80万フランで売買された。1909年にはルーヴル美術館に寄贈され、フランスの誇る作品の一つと位置づけされた。

タイトルのL'Angélusは、「主のお使い」で始まる祈りの言葉である。その言葉を、ミレーの祖母は仕事の終わりにかならず唱えていたという。この絵はだから、祖母の思い出に捧げられたものなのである。ミレー自身がそう言っている。

(1857年 カンバスに油彩 55.5×66.0cm パリ、オルセー美術館)





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