米軍トップが大統領命令を拒否

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トランプの最後の日々に、米軍のトップが踏み出した行動が大きなセンセーションを巻き起こしている。統合参謀本部長のマーク・ミリー将軍が、全米軍に対して、中国への核攻撃を命ずるトランプの命令には、自分の介入なしには一切従うな、と指令していたというのだ。これはワシントンポストへの寄稿者ウッドワードが近いうちに出版する本の中で明らかにしたことだが、その報道が伝わると早速大騒ぎとなった。まず当のトランプが怒りを爆発させ、いまは自分でやれることはないので、共和党の議員達に対して、ミリーを訴追して、反逆罪で裁けと喚きたてた。

じっさい、ミリーの行動は、もし本当なら、反逆罪に相当するものだ。合衆国の法システムはシビリアンコントロールを徹底させており、大統領は米軍の最高司令官である。大統領の命令は絶対であって、いかなる場合にも、米軍はその命令に従わねばならない。ところがミリーはその大統領の権限に正面から挑戦したのである。

これは非常にむつかしい問題を提起している。ミリーの論理は、いまや有力な、違法な命令に対する抗命権の法理を前提にしている。これは上司の違法な命令に従う義務はないとするものだが、今回の場合、その理屈が通るためにはトランプの命令の違法性を証明しなければならない。ミリーはしかし、違法性ではなく、それがもたらす破壊的な効果を取り上げた。精神的に異常な状態にある大統領が、明らかにアメリカに破壊的な結果をもたらす行為を命令したときには、それに従う義務はないとする理屈だ。

たしかに、政権最後の日々におけるトランプには精神の異常を強く感じさせる言動が見られた。そういう状態でトランプが中国を核攻撃する可能性が十分に予測された。その攻撃が中国のカウンター核攻撃を招き、米国に深刻な打撃をもたらすことも十分に予測された。従ってそのような結果を阻止するために、精神的に異常な大統領の異常な命令には従う義務はないというのが、ミリーの主張である。

この問題は、容易には収まらないだろう。ことはアメリカの国家意思にかかわる。その国家意思が大統領と米軍トップの間で分裂しては、アメリカは国家として必要な行動がとれなくなる。これはゆゆしき問題だ。

トランプという異様な人間が権力の座を下りても、この問題が提起した可能性がなくなったわけではない。バイデンはいまや中国に対してトランプ以上に攻撃的であるが、それにはかれの認知症が働いていると噂されている。とくに共和党の議員からは、バイデンに認知症検査を施せという主張が出されているくらいである。そんなわけだから、ミリーの恐れが消滅したわけではない。むしろ高まっているといえる。そういう状況を、世界はどのようにコントロールすべきか、何にもまして重要なことである。





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