東瀛仙苑図:富岡鉄斎の世界

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東瀛は瀛州といい、蓬莱、方丈とともに東方の海上にある仙境といわれた。具体的には日本をさすともいう。「東瀛仙苑図」と題するこの絵は、その仙境を描いたもの。

鉄斎の山壑図の定石にしたがって、峨々たる岩山と急峻な流れとが入り混じって描かれているが、これは横長の画面なので、垂直感よりも横への拡がりに気を配っている。また、遠近感を出すために、背景の山々を薄く塗るなどの工夫もされている。

画面右手から左下に向う流れが強いアクセントになっていて、その流れに沿って視線を動かすと、その先に船が見えてくる。童子らしきものが棹を操り、老人が悠然として座しながら周囲の風景を楽しんでいる。船のいる部分の上部には、開けたところに鹿が見える。これは神鹿だと思われる。

山上の建物は、日本風ではなく、中国風である。なお、賛には、「東瀛仙境」とある。

(1918年 絹本着色 74.9×85.8cm 西宮市、清荒神清澄寺)





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