西王母像:富岡鉄斎の世界

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「西王母像」と題するこの作品は、友人の母の古希の祝いに贈ったもの。賛にその旨が記されている。曰く、「幡桃已に熟す三千年 萱草春に生ず七十年」。幡桃は三千年に一度なるという長寿の桃、萱草は母を象徴する。その母が七十歳になったのはめでたいことだ、との意味が込められている。

上段に、実がたわわに実った桃の木が描かれ、下段には桃の実を前にして、岩にもたれながら幼児の遊ぶさまを見守る西王母が描かれる。西王母は仙女であり、このように子どもをいつくしむ姿で描かれるのはめずらしい。

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これは西王母の部分を拡大したもの。王母はふっくらとした姿で表現され、その目には慈しみがあふれている。また、子どもは川の流れにつかり、一心不乱に桃の実を洗っている。鉄斎の作品としては、もっともわかりやすいものである。

(1923年 紙本着色 131.0×49.5cm 宝塚市、清荒神清澄寺)






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