美人之図:上村松園の美人画

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松園には、浮世絵、肉筆画をとわず、先人特に徳川時代の著名な画家の作品を換骨堕胎して自分の絵のモチーフに取り入れることが多かった。「美人之図」と題されたこの絵もその一つ。これは三畠上龍の「灯篭美人図」をほぼそっくり真似たものである。今なら盗作呼ばわりされる可能性が強いが、明治の日本にはそんなにうるさいことを言うものはいなかった。

三畠上龍は、天保の頃に京都で活躍した四条派の絵師で、松園にとっては、流派の先輩ということになる。決して才能豊かというわけではなく、いまでは忘れられたも同然の画家だ。

松園のこの作品は、構図はほとんど三畠の作品の模倣といってよい。ただ着物や帯の色彩・模様に変化を加えている。三畠の作品と比べると、娘はずっと若々しく見え、その仕草にもあどけないところがある。

(1910年 絹本着色 137.8×56.5cm 広島県廿日市市、ウッドワン美術館)





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