舞支度:上村松園の美人画

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松園は京都人であったから、日頃から舞に親しんでいたようだ。能に取材し作品も多く手がけている。「舞支度」と題したこの絵は、舞や能をモチーフにした作品のなかで初期のものに属する。大正三年の第八回文展に出展して、二等賞を得た。

これから始まる仕舞に向けて緊張する娘と、囃子方を受け持つ内儀たちの寛いだ姿が対照的に描かれている。松園は生きたモデルを使うことはあまりなかったが、この作品の製作にあたっては、わざわざ祇園に通ってスケッチしたという。尤も、見たままの姿をそっくり描いたわけではなく、モチーフに相応しい変形を施している。

娘の着ている振袖の菊の模様とか、内儀たちの小袖の渋い色合いからして、初秋の雰囲気を出しているのだと思われる。

この絵は高い評価を得たが、群像がやや込みすぎているという批評があったりして、後に松園は、左手の娘と、右手の内儀たちを、それぞれ別の画面に描きなおして、二幅の絵に仕立てなおした。「人生の花」を「娘ざかり」に仕立てなおしたのと同じやり方である。

(1914年 絹本着色 160.0×188.8cm 京都国立近代美術館)





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