春秋:上村松園の美人画

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「春秋」と題した二曲一双のこの作品は、徳川家の依頼で製作された。娘が高松宮家へ嫁ぐにあたり、その嫁入り道具としてであった。製作のための時間が限られていたので、松園は、四年前に聖徳太子奉賛美術展に出展した「娘」を差し出すこととし、それにもう一点を加え、二曲一双の屏風絵に仕立てるつもりであった。ところが、「娘」は海外巡回展からなかなか戻ってこず、松園はその絵をもとにして描き直すことを迫られた。

上の絵は、「娘」を描きなおしたものである。構図は全く同じだが、着物の色や帯の模様に変化がある。着物の色は、若い娘に相応しい華やいだものに変り、帯の模様には、鳳凰や孔雀など、慶賀の雰囲気に相応しいものが選ばれている。

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こちらは、抱き合わせで描かれた年増女の図柄。床机に腰掛け、団扇で風を起している様子が色気たっぷりに描かれている。二つの屏風を並べてみると、双方の人物の視線が交差しているのがわかる。

(1930絹本着色 二曲一双 各160.0×188.0cm 愛知県、名都美術館)





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