平和のしるしとして共和国に挨拶に来た諸大国の代表者たち:アンリ・ルソーの世界

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「平和のしるしとして共和国に挨拶に来た諸大国の代表者たち(Les représentants des puissances étrangères venant saluer la République en signe de paix)」と題するこの作品は、1907年のアンデパンダン展に出展された。大変な評判となり、絵の前には大勢の人だかりができたという。そして見る者はみな腹をかかえて笑ったそうである。たしかに、この絵には、人を馬鹿にしたようなところがあり、それが人々の笑いを誘ったのであろう。

ルソーが何を題材にしてこの絵を描いたのか、よくわからない。実際にこのような外交使節団が、フランスを訪問したのだろうか。仮設の階段の上に、色とりどりの服装をした外交使節たちが並んでいる。軍人風の者もいれば、ローマの護民官風の者もおり、人間の代理らしいライオンの姿もある。護民官風の男が抱えている盾には、「力の統合体」と書かれているが、これは後の国際連盟を予感させる。

人々の背後には、大きな屋根の上に、各国の国旗がはためいている。これはパリ万国博の時の万国旗を思い出させる。実在しない国旗があるのは愛嬌だろう。画面右手には、共和国英雄の銅像を囲んで人々が輪になって踊っている。当時はやったフォークダンスかもしれない。

とにかく、ほほえましい光景である。人物たちがそれぞれ異なった大きさで表現されており、一緒に並んでおりながら、それぞれ自分勝手に自己主張している。

(1907年 カンバスに油彩 130×161㎝ パリ、ピカソ美術館)





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