
舞はだいたいが女の役柄だが、男の役柄が演じるものもある。それを男舞という。能「小袖曽我」の中で、曽我兄弟が演じるのはその代表的なものである。一方で、神社の神事において、巫女が男の姿で舞うものもある。これは、中世の白拍子が、白い水干に立て烏帽子の姿で、太刀を帯びて舞ったことに由来するといわれる。
松園のこの「男舞之図」は、鹿島神宮の神事における巫女の舞う姿を描いたものだという。白い水干ではなく、色あざやかな服を着て、金色の烏帽子には花飾りのついた長い簪が見えている。背中に御幣をつけているところは、いかにも神事らしい。
これと同じ趣向の男舞之図が、徳川時代初期、寛文のころに盛んに作られたという。松園のこの絵は、それをもとに描いたものだと指摘されている。女官のキリリとした表情が印象的である。
(1938年 絹本着色 53.0×64.5cm 名都美術館)
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