満願の日:竹久夢二の美人画

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夢二は、たまき以下自分が深い関係を持った女性たちをモデルに多くの美人画を制作した。そうした美人画は、女のエロチックな魅力を捉えたものだが、初期には、挿絵を多く手掛けていたこともあって、マンガチックな作品も多い。「満願の日」と題したこの作品は、夢二の漫画風美人絵の代表的な作品。

満願というのは、神社仏閣への願掛けの期限が満ちることをいう。その日には、お礼参りをする決まりだ。この絵の中の娘も、着飾ってお礼参りに出かけるところのようだ。

娘の背後に「め組」の大提灯が見える。「め組」の喧嘩は歌舞伎狂言「神明恵和合取組」で有名になった。そのめ組は、芝神明神社と縁が深いというから、この娘は神明神社に願掛けをしたのだろう。

娘が着ている振袖の模様は、夢二が好んだ椿の文様、鳩が飛び立つのは吉のしるしだという。娘の表情がきりりとして、いかにも下町の勝気な娘を思わせる。

(1911年 紙に木版 28.5×18.0㎝ 「女子文壇」所収 岡山市、夢二郷土資料館)





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