ベツレヘム教会で説教するヤン・フス:ミュシャのスラヴ叙事詩

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(ベツレヘム教会で説教するヤン・フス)

ヤン・フスは、15世紀初頭に活躍したチェコの宗教家で、ルターの宗教改革の先駆者として知られる。カトリック教会の腐敗を批判し、贖宥状の廃止と聖書のみによる信仰を主張したために、カトリックの宗教裁判で有罪となり、火刑に処せられた。

この絵は、プラハのベツレヘム教会で説教するフスと、それに聞き入る人々を描いている。フスは、カトリック教会により異端者の烙印を押されたが、自分自身は教会を否定しているわけではなく、その改革を主張しているのだと言っていた。この説教が行われたのは1412年、処刑される3年前のことだ。この説教の中でフスは、考えを改めよとのカトリック教会の命令に対して、「真実は勝つ」という有名な言葉を吐いたのであろう。

教会の広い礼拝堂に中で、群衆を前に説教するフスが描かれる。画面左手に、赤い頭巾をかぶって立っているのがフスであろう。フスは顎髭を生やしていたそうだが、その髭は見えない。

(1916年 カンバスにテンペラ 610×810㎝ プラハ、ヴェルトゥルジニー宮殿)

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(クジーシュキでの集会)

ヤン・フスが1417年に処刑されると、フスの信者たちはカトリック教会への反抗を強めた。これに対してカトリック教会が武力鎮圧で臨んだので、1419年にはフス戦争と呼ばれるものが始まった。この戦争は、カトリック教会側が度重なる十字軍を編成し、それをフス派が迎え撃つという形で20年間続いた。

この絵は、戦争の開始を前に、信者の団結を呼びかけるためにおこなわれた集会の様子を描いたもの。一段高く設けられた壇上に指導者のヴァーツラフ・コランダが立ち、信者たちに呼びかけている。

なお、この作品は、「クロメジージュのヤン・ミリーチ」、「ベツレヘム教会で説教するヤン・フス」とともに、「言葉の力」三部作を構成する。

(1916年 カンバスにテンペラ 620×405㎝ プラハ、ヴェルトゥルジニー宮殿)





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