じゃじゃ馬ならし:シェイクスピアの喜劇

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シェイクスピアの喜劇「じゃじゃ馬ならし」は結構人気があって、いまでも頻繁に舞台に乗せられるほか、何度か映画化されてもいる。なかでもメアリー・ピックフォードとダグラス・フェアバンクスが共演した1929年版は、原作のうちの見どころを圧縮して、わかりやすい構成になっている。

原作は複雑な構成で、ペトルシオによる若妻ケイトの調教(じゃじゃ馬ならし)の部分は実は劇中劇だという扱いであり、その劇中劇には、ほかにケイトの妹にまつわる結婚話が並行して進んだあげく、姉はしとやかな妻になるのに対して、妹が手の付けられないじゃじゃ馬になるというどんでん返しがあるのだが、この映画は、ペトルシオによるケイトのじゃじゃ馬ならしの部分だけを取り出して、面白おかしく仕立てている。

ケイトのじゃじゃ馬ぶりは、あたりかまわず暴力を振るうことで表される。彼女は気に入らないと、誰に向かっても暴力を振るうのだ。求婚者のペトルシオにも当然暴力を振るうが、知能と膂力に勝ったペトルシオにはかなわない。すっかり手なづけられてしとやかな妻になるのである。その過程が小気味よく描かれているのだが、彼女がなぜペトルシオの威力に屈したのかは、いまひとつわからないような出来になっている。

最後の場面で、妻は夫に忠節を尽さねばならないと説教する場面が出て来るが、これは原作では、じゃじゃ馬ぶりを発揮しだした妹に向っての説教なのに、それが映画では説明不足のために、彼女がなぜそんな説教をするのか、原作を読んだことのない者には、いまひとつわかりにくいのである。

まあ、そういう小さな傷を別にすれば、この映画はなかなかよくできている。特にメアリー・ピックフォードの表情が、なかなか可愛い。この人は実生活でも利口な人で、この映画に共演したダグラス・フェアバンクスやチャーリー・チャップリンらとともに、映画会社ユナイテッド・アーティストを立ち上げたほどだ。






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