桜図:長谷川久蔵

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智積院所蔵の障屏画のうち「楓図」と一対をなすといえる「桜図」は、長谷川等伯の息子久蔵の手になるものである。当時久蔵は満二十四歳という若さであり、その才能が大いに嘱目されたが、惜しいことにこの翌年に死んでしまった。

夭折したわりには、何点かの重要な作品を残している。なかでもこの「桜図」は彼の畢生の傑作といってよい。二本の桜を配し、それらから縦横に伸びた枝に、夥しい数の花をちりばめている。桜の花の華やかさが、画面全体を覆っているこの作品は、「楓図」の濃艶さに比べて、のびのびとした解放感のようなものを感じさせる。

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これは、桜の樹幹の部分を拡大したもの。桜樹を前後二本並べたために、画面に奥行きが生まれている。枝が下向きになっているのは、枝垂桜のものか。霞を効果的に生かすことで、画面に変化をもたらしている。(紙本金地着色 四面 智積院 国宝)







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