来日外国人の労働搾取

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安倍政権が事実上の移民受け入れ政策をとったことに伴い、既存の外国人労働者の実態に関心が集まった。技能実習生などの名目で受け入れている外国人労働者が、非常に劣悪な環境に苦しんでおり、その実情はまさに、日本企業による外国人の労動搾取、あるいは奴隷労働だとの批判を招く中で、今後日本が受け入れる移民労働者がどのような待遇をうけることになるのか、関心が集まるのは、ある意味自然なことだ。こうした関心に答えるかのように、NHKが、主にベトナムから受け入れた技能実習生らの実体をルポルタージュ取材した番組を流した(7月13日のNHKスペシャル)。

この番組を見て、小生は暗澹たる気持ちに陥った。希望を抱いてベトナムから日本にやって来た若者の多くが、過酷な労働搾取に苦しみ、その挙句に死んでいく者も多い。その割合は、若者たちの年齢からすれば異様に大きい。この番組では、一人の仏教の尼僧がキーパーソンとして出て来るが、彼女の日本での仕事は、過酷な境遇によって死んでいったベトナム人たちの霊を弔うことだというふうに伝わって来た。

ベトナム人の若者の多くが死なざるを得なかったのは、危険な仕事や違法な仕事に従事したためだという。ベトナムの若者は、日本とベトナムとの協定に従って日本にやって来るが、あまりのひどい待遇に驚いて、それを訴えても誰も解決してくれるシステムにはなっていない。そこで若者は、たこ部屋のような搾取環境から逃げ出すが、それは日本での滞在資格を失うことにつながる。それでも巨額の借金を抱えた若者たちには、祖国に帰るという選択はない。そこで誰もやりたがらない危険な仕事や違法な仕事にとびついて、その挙句命を失うという構図が見えて来る。こういう構図を見ると、日本という国は、外国人に対しては、国全体がたこ部屋化しているという印象を持つ。

もっとも日本に来たベトナム人の全員が、こういう境遇に陥っているわけではない。中には成功して満足している者もいる。しかしその割合は、日本側の受け入れ業者の見積もりでも二割程度にとどまるという。つまり圧倒的な割合は、たこ部屋的な境遇に陥っているわけである。

こんなことは許されるはずがない。こんなことを、日本が国として続けていけば、国際社会からひどい反発を受けるのは目に見えている。いまでもこんな調子では、これから先大量に受け入れる外国人をめぐって、深刻な軋轢が生じるのは不可避だ。小生はかならずしも外国人を移民として受け入れることに賛成ではないが、受け入れるのであれば、きちんとした体制整えて、受け入れるのが筋だと思う。

この問題は、戦時中の徴用工問題にも通じるものがある。戦時中の徴用工は、まさにたこ部屋的な境遇に陥っていたわけだが、それとこの番組の中でベトナム人たちが置かれている境遇に、どんな相違があるのか。日本が外国人労働者を人間として扱わない限り、日本は人権に対して無関心な国であり、かつて徴用工に対して行ったことを、現在の外国人労働者に対しても、性懲りなく行っていると、諸外国から見られるようになるのは避けられない。実に恥ずかしいことである。





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