日韓関係は何故もつれるか

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日韓関係がかなりもつれている。ある意味戦後最悪の状況になっており、もはやもつれを通り越して危機的な険悪さを感じさせられる。いまにも戦争が始まってもおかしくないほどだ。というより、物理的な武力によらないとはいえ、経済的な武器で相手を叩きのめそうとする日本の態度は、経済戦争というかたちの戦争をしかけていると、国際社会から見られているのではないか。何故こうなってしまうのか。

日韓関係がもつれるのは今に始まったことではない。戦後何度も繰り返して来た。そういうもつれに対しては、歴代の日本の政権は、大人の態度を示して、相手に対して譲歩することで決着を図って来た。ところが安倍政権には譲歩する意志は全く感じられない。気に入らぬ相手は、とことん叩きのめしてやろうという態度をとっている。これでは、韓国を必要以上に刺激し、対立が先鋭化するのは避けられない。

この対立を引き起こしているのは、まずは韓国の徴用工判決をめぐる動きであり、従軍慰安婦をめぐる日韓両国共同の事業を勧告側が一方的に廃止したことである。そのほかにも軍事的な面での対立も伴っているが、本質的な原因は以上の二点、とりわけ徴用工問題である。

この問題については、日本側は1965年の日韓請求権協定を持ち出して、日韓両国が相手国に対して持っている請求権を放棄したことを根拠に、すでに解決済みだという立場をとっている。国家間の約束で解決した問題なのだから、あとは、韓国内の問題は韓国内で解決しろという主張だ。これに対して韓国側は、国家間の請求権の放棄と、個人の請求権とは違うレベルの問題だから、個人の請求権を認めた韓国法曹界の判断は、法理的に正しいという立場をとっている。主張の根拠がくい違っているわけだ。

このことの背景には、両国関係の歴史が背景にある。1965年の日韓条約は、過去の植民地支配を清算して、対等の国同士の関係を基礎づけたものだが、その際に、植民地支配についての両国の認識には根本的な相違があった。日本はこれを合法的なものと見なしたのに対して、韓国は不法な支配で、その支配下で起きたことはすべて無効だという主張をした。その主張の溝は最後まで埋まらず、条約は、植民地支配はすでに無効であるという玉虫色の表現をとった。

つまり、日本側は朝鮮半島の植民地支配を合法的なものとみなし、それを終わらせることは、日本側の恩恵的な配慮に基づくものだという主張を、暗黙裡にしていたことになる。日本側がそのように考えたわけは、韓国は自力で独立したわけではなく、日本の敗戦の反射的効果として、いわば棚ぼた式に、独立できたにすぎない。それについては、旧宗主国たる日本の恩恵的な配慮がある。韓国は、日本にとっては妾のようなものだったわけで、その妾に旦那である日本が、自立を許してやったのだというような受け止め方を、当時の日本の支配層は抱いていたと思われる。

植民地支配が合法的だとすると、日本が朝鮮半島に有していた権利・資産も、合法的に日本が回収する権利があることになる。だが、妾である韓国が自立する際の手切れ金のようなものとして、その権利の主張をすることはやめよう。そのかわり韓国も、日本の植民地支配にかかわって生じた権利の主張をやめてもらいたい。それでアイコということにしようというのが、日本側が考えている日韓請求権協定の趣旨である。

ところが韓国ではそうは考えない。たしかに国レベルでは互いに請求権の放棄をしたが、個人レベルでは、植民地支配にともなう賠償請求は消滅したことにはならない。そう考えている。したがって、日本の考え方とは決定的に異なっているわけだ。異なった考え方をそれぞれ根拠にしては、有効な合意はできないわけで、日本と韓国はほぼ永久的にいがみあう構図になっていると言わねばならない。困ったことである。





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