トランプの一国主義がG7の存在意義を揺さぶる

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フランスで行われた今年のG7サミットは、従来恒例だった共同声明の作成・発表を見送った。アメリカのトランプと、ヨーロッパ諸国の指導者との間で意見の隔たりが大きく、一致した見解をまとめることができなかったためだ。それにはトランプの一国主義が作用している。トランプは、昨年も一国主義の立場から、カナダが中心に作成した共同声明に異議を唱えたが、今年はその作成自体をボツにさせたわけだ。

トランプはアメリカ中心の一国中心主義を追求し、ヨーロッパ諸国はなんとかして世界の強調をめざす。そんな構図が、強固なものとして出来上がってしまったようだ。その象徴的な事態が、イランをめぐって起こった。イランをめぐる緊張をなんとか緩和させようとして、マクロンがイランの外相をサミット開催都市に呼んで、トランプとイランとの対話へとつなげようとしたが、トランプはこれに関心を示さなかった。マクロンがイランと話すのは邪魔しないが、自分にはその気はない。やりたければ勝手にやれ、と突き放した態度を見せた。

トランプのこうした一国主義は、別の形でも表明された。それに日本の安倍晋三総理が付き合わされた。日米通商交渉にかかわる成果を、わざわざG7の会場を利用して、主に米国民に対して自慢して見せたのだ。この日米交渉については、日本がアメリカの要求に一方的に屈したというのが実情だ。日本政府は、ウィンウィンなどと強弁しているが、それをまともに受け取る者はいない。ともあれトランプは、G7の席で、G7のことにはまったく関心を示さず、自分の都合のよいことばかり演出して見せたということだ。

トランプが一国主義にこだわる理由は、アメリカが必ずしもグローバライゼーションの受益者ではないという信念から来ている。グローバライゼーションの受益者は、国際資本であり、その国際資本にアメリカ人の大部分は搾取されている、と考えているようである。その考えには一理あるともいえようが、しかし世界平和のためには、各国がある程度強調する必要があるのではないか。

トランプ自身は、どうもそうは思っていないらしく、できたらG7など壊したほうがよいとまで思っているようである。その証拠に、アメリカで来年開く予定のG7には、プーチンを呼ぶつもりだと言っている。それをヨーロッパ諸国の指導者が受け入れるのはむつかしいことだ。場合によっては、プーチンをめぐる対立から、G7が瓦解する可能性も否定できない。ともあれトランプの一国主義が、G7の存在意義を揺さぶっていることは間違いない。

それにしても、トランプの国際的受益者がプーチン一人というのは、なんともおぞましい眺めだ。プーチンとしては、アメリカ大統領選挙に介入した成果があがっているということになるのだろうが。





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