如拙:室町時代の水墨画

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如拙は室町時代の中頃に京都の相国寺を舞台に活躍した画僧である。当時相国寺は、足利幕府との関係が深く、相国寺の画僧たちは幕府の保護も受けて、いわば官学アカデミー的な立場を築いていた。如拙はそのアカデミーの主催者のような地位にあり、彼の下からは周文やその弟子格の雪舟といった、室町時代の日本画を代表する画家が輩出した。

如拙の生涯には不明な点が多いが、足利義持に命じられて描いた「瓢鯰図」の賛に手がかりとなる情報が盛られている。それによると、大相公義持が如拙に命じて新様を描かせたとあるが、新様とは当時中国で流行していた画風をさす。つまり南宋画風の絵ということである。以後この南宋画風の絵が、幕府好みの絵となったわけで、官学アカデミーの主流の画風となっていくわけである。

瓢鯰図(上の絵)は、瓢箪を持った翁が鯰を取ろうとするところを描いている。こういうテーマが当時はやっていたのかはわからない。中国や我が国の文献にもそのようなテーマは見当たらないようだから、注文主である義持の道楽かもしれない。

技法的には減筆が指摘できる。減筆でも、「墨を惜しむこと金を惜しむが如し」といわれた南宋の梁楷の技法に倣ったもの。(十五世紀初期 紙本墨画淡彩 111.5×75.8㎝ 京都、退蔵院)

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これは、「三教図」。儒仏道の祖である孔子、釈迦、老子の三人の教えを絵にしたもの。瓢鯰以上に減筆の技法が用いられており、全体としてスケッチのような印象だ。

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これは、「王義之書扇図」。書生王義之が扇売りの老婆に求められて書を施してやったところ、その扇が飛ぶように売れたという中国の伝説をイメージ化したもの。椅子に腰かけた王義之が扇になにか書いているが、待機している二人の女性は老婆ではなく、若い女のようである。

この絵も、もともとは扇の面に描かれていたが、後に詩画軸に表装しなおされた。(十五世紀初期 紙本墨画 83.1×32.5㎝ 京都国立博物館)







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