神戸市の教員給与差し止め条例は適法か?

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先日、神戸市立東須磨小学校の教員間で起きた陰湿ないじめ問題では、加害者の教諭四人が謹慎処分に処されていたが、それが有給休暇制度を利用したもので、給与が支払われているのはけしからぬとして、このたび神戸市議会がかれらへの給与の差し止めを可能にする条例を作ったそうだ。市民の感情を考慮したものだというが、果たして問題はないのか。例によって日本のメディアの報道は、明確で丁寧なものとはいえないので、なにが起きているのか、よくわからないところがある。給与の差し止めなどというから、有給休暇中にかれらに支払われるべき給与を差し止めることかといえば、どうもそう単純なことではないらしい。

明確さを欠く報道の文面から忖度すると、給与差し止めにはもっとひろい意味がありそうだ。この条例には、これらの教員たちに分限休職を命じることができるようにし、それに伴う効果として給与の支払いを差し止めるということも含まれているらしい。

これだけの情報では、正確な考察は出来ないかもしれないが、できる範囲でこの条例なるものの問題点を指摘してみたい。まず、給与の差し止めという点。これについては、教員たちの有給休暇にかかる給与の差し止めを意味するのだとしたら、それは違法だといわざるをえない。給与というのは、ノーワークノーペイの原則に基づいており、働いた期間に相当する給与は支払わねばならない。有給休暇期間中は働いたと見なされるのであるから、それに対応する給与を差し止めるのは違法である。こうした法理は、公務員法の欠格条項に基づいて、過去に遡って身分を失った場合において、その間に支払われた給与は、労働の対価として認められている例からも明らかである。

次に、教員に対して、分限処分による休職を命じることの可否について。公務員法上の分限処分は、公務員の身分にかかわる事柄である。そういう事柄については、身分が人権と連動していることからして、本来法律で定めるべきものである。それを条例で定めるのは、やりすぎではないか。条例では、人権の制約まではできないと考えるべきである。今回のケースについては、当該教員らに重大に非違があったことを分限処分の理由にしているが、そうした非違は本来懲戒処分で対応すべきである。実際この教員たちは、公務員の信用を著しく失墜させているのであるから、懲戒処分に処する理由は十分にあるのであって、なにも分限処分を拡大して処分すべき性質のものではない。

こういうわけで神戸市議会の今回の条例可決は、重大な問題を内包しているようである。





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