王子不動之滝、角筈熊野十二社:広重の名所江戸百景

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(49景 王子不動之滝)

王子不動の滝は現存していない。いま北区役所があるところと、正受院という寺との間にかかっていたという。このあたりを流れる石神井川は、両岸をうがっていたので、そこに深い谷間が出来、滝がいくつかかかっていたという。そこからこのあたりの石神井川を滝野川と称した。不動の滝はそうした滝の一つ。

いまは寺に移されたが、徳川時代には滝の裏側の洞窟に不動明王像がまつられており、そのことから不動の滝と呼ばれるようになった。この絵はその滝の勇壮に流れおちるところを描いているが、このように高低差があったとは考えられないので、広重一流の誇張があるのだと思う。

水の流れ落ちる様子がやや様式的で、北斎のものと比較すると、ダイナミックさに欠けるかもしれない。

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50景 角筈熊野十二社)

新宿区の都庁のあるあたりを昔は角筈といった。角筈とは山伏の持つ杖の飾りのこと。甲州街道や青梅街道を山伏が往来していたことからそう呼ばれるようになった。三鷹の連雀町も山伏にちなんだ名である。

熊野神社は、都庁の西側、新宿中央公園を挟んだ場所にたっている。紀州熊野から、三所権現、四所明神、五所王子、あわせて十二社を勧請したことから熊野十二社と呼ばれることになった。いまでは温泉が湧いているので、小生なども仕事帰りに一浴したことがある。

この絵は、甲州街道あたりから西の方角を望んだ構図だろう。大きな池は神田上水のため池。この池は、昭和の終わりころに都庁が作られるころまで残っていた。池の先に広がる原っぱが、いま都庁が立っているあたりである。その先に見えるのは、大山、丹沢の山々だろう。






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