愛して飲んで歌って:アラン・レネ

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アラン・レネといえば、絶滅収容所をテーマにしたドキュメンタリー映画「夜と霧」が有名だ。それを公開したのは1955年のことだったが、それから半世紀以上経った2014年に「愛して飲んで歌って(Aimer, boire et chanter)」を作った。実に90歳のときである。高齢の監督としては、ポルトガルのオリベイラがあげられるが、アラン・レネも決して負けていないということだろう。

三組の夫婦の日常を描いている。その日常が芝居仕立てで展開するといった趣向の映画だ。芝居仕立てというのは、芝居の舞台の上で演じられるという意味で、映画のアイデアとしては珍しいことではない。日本では、木下恵介の「楢山節考」が有名だ。

三組の夫婦とは、コリーヌとタマラ、ジャックとカトリーヌ、シメオンとモニカである。映画にはこの六人しか出て来ない。最後にジャックとカトリーヌの娘ティリーが姿を見せるが、ほとんど意味のある存在感はない。かえって、節目ごとに出てくるモグラのほうに存在感がある。

ストーリー性はあまりない。三組の夫婦の共通の友人であるジョルジュが、ガンとわかり余命半年と宣告される。そのジョルジュをめぐって、この三組が右往左往するところが描かれる。事態の焦点であるジョルジュ自身は出てこず、三組の夫婦が右往左往するさまがひたすら描かれるのである。

その右往左往の内容は、夫婦間の感情の行き違いから生まれる。この三組は、互いに配偶者の不倫を疑ったり、セックスレスにともなう欲求不満から、常軌を逸した行動に走ったりするのだ。

そういう点では、ある種の不条理劇と言ってよいかもしれない。不条理といえば、フランス映画でフランス人が演じているにもかかわらず、舞台がイギリスのヨークシャーというのも変だ。そのヨークシャーの町が、風情たっぷりに映し出される。それを見るだけでも、目の保養になる。






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