揺れる韓国の司法判断:元徴用工の訴え棄却

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韓国で元徴用工の遺族らが日本企業に対して損害賠償を求めた裁判に関して、ソウル地裁が原告の訴えを却下した。そのこと自体は、日本側は評価し、また韓国内でも法理論的に支持する意見もあるようだが、司法制度の基本的なあり方から照らしてみると、異様といわざるをえない。

この問題については、2018年に、日本の最高裁にあたる韓国の大法院が日本企業に損害を命じる判決が確定している。その内容の如何については別のこととして、司法制度の原則から言えば、最高裁の決定は裁判所全体の決定を拘束するもので、一地方裁判所が、それを全面的に否定するようなことはあり得ない。そんなことがあり得るようでは、司法への信頼はがた落ちになる。

こんなことが起きるのは、韓国の司法システムが、政治の強い影響下にあって、独立していないことの表れだろう。それには、韓国内の政治的・社会的分断が大きく作用していると考えられる。韓国では、政権が代わるたびに、前任の大統領が訴追され、場合によっては死刑判決を受けるといった事態が続いて来た。そうした事態に司法も深く関わってきたわけで、これは韓国の司法が完全に政治の道具に使われていることを意味している。三権分立という、近代国家にとっての原則中の原則が韓国ではお粗末にされているわけで、そのことは、韓国がいまだ完全な文明国の域に達しておらず、半文明国の段階にとどまっていることのあらわれだろう。

韓国の分断はすさまじい。まず南北でいがみあって、民族としての一体性を確立できていない。韓国内部でも地域間の根深い対立があって、過去には済州島事件とか光州事件といった、権力による地方住民への大虐殺まで起きている。これは、日本で言えば、日本国家がある特定の地域の住民に銃を向けるようなもので、到底考えられない異常事態だ。そうした異常事態が韓国では繰り返されてきたわけで、とてもまともな国家とは言えない。その異常さが司法の場にも現われているということだろう。

司法が政治の状況に影響されるのは、どの国でもある程度認められることで、日本の司法といえども、政治権力に対しては遠慮しがちなところはある。しかし韓国の司法は、司法としての基本的な建前をもわきまえていないように見える。そういう司法制度を抱えた国家は、他国の深い信頼を得られないだろう。





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