レベッカの略奪:ドラクロアの世界

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「レベッカの略奪(L'Enlèvement de Rebecca)」と題したこの絵は、ウォルター・スコットの有名な小説「アイヴァンホー」に取材した作品。「アイヴァンホー」は十字軍時代のイギリスの騎士の活躍を描いた作品で、非常に人気を博していた。ドラクロアはその中の、テンプル騎士団の一員ギルベールが、ユダヤ人の娘レベッカを愛し、城から略奪する場面を取り上げた。

ドラクロアは、同じモチーフの作品を1848年にも手がけていた。同じモチーフをなぜ繰り返し描いたのか。ドラクロアのロマン派趣味のあらわれかもしれない。前作では、人物に焦点をあて、レベッカは馬の上に引き上げられた姿で描かれていたが、この作品では、城を背景に大きく描き、レベッカはギルベールに担がれた姿で描かれている。そこに暴力的なものを感じさせる。

1859年のサロンに出展された。ドラクロアとしては最後のサロン出展であった。それに向けてこの絵の製作に取り掛かったのは、1856年3月のことだった。ドラクロアは別荘でこの製作に従事しており、時たま別荘を訪れるときに筆を加えたので、完成までにかなりの時間を要した。

「火刑台のオリンドとソフロニア」と比較すると、色彩がやや地味である。

(1858年 カンバスに油彩 105×81.5cm パリ、ルーヴル美術館)






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