中国との対立に備えよ:朝日の元陸将へのインタビュー

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朝日の今日(6月11日)の朝刊に、元陸将へのインタビュー記事が載っていた。元陸将とはいえ、2015年まで現役で、退官後も自衛隊の防衛政策にかかわってきたというから、自衛隊の制服組の本音を代弁していると思われる。そんな人物の意見に小生は剣呑なものを感じたので、見過ごすわけにはいかなかった。

まず、国防上の現状認識。かれは今の日本をめぐる状況は日清戦争前夜に似ているという。大した根拠は示していないが、要するに中国とロシアが日本に対して強力な圧力をかけていると言いたいのだろう。当時の中国である清国を「強大な清帝国」と表現していることから、当時と同じような強大な力で以て中国が日本の脅威になっていると言いたいのだろう。その上で、当時の日本が強大な清帝国との戦争を強いられたように、いまの日本も中国との戦争を強いられるかもしれない。だから、中国との来たるべき対立、場合によっては戦争の事態に備えよ、と言っているように聞こえる。

そうした認識をもとに、この元陸将は、中国との対立あるいは戦争に勝つために日本は何をせねばならないのか、という議論を展開している。軍事的には中国との軍事対立に十分対応できる体制を整えること、政治的には、アメリカとの軍事同盟を強化して、中国よりも優位にたつこと。また、台湾に深く介入して、台湾海峡の中国による制圧を許さないこと、といった意見が吐露される。

中国との対立が経済問題に及ぼす影響については、「現代国家の標準は安全保障が存在の基本」といって、経済のために妥協することはないと言い、尖閣の問題については、これは領土主権にかかわることだから、「人が住んでいようがいまいが、主権の及ぶ領土を守ることは国家の責任である」と言って、絶対に妥協する考えのないことを強調している。

このインタビュイーは、制服組の出身であるから、軍事的観点から国の安全を論じることは当然のことだろう。だが、軍人というものは、国の政治指導者が最終的な責任を以て決めた方針を、軍事的な分野において遂行するのが任務だ。制服組といえども、言論の自由は許されるが、自衛隊という国の組織の一員としての立場からは、余りに政治的な発言は問題がある。このインタビュイーは、尖閣問題には妥協の余地はないとか、台湾と中国とのデカップリングを目指すような発言をしており、あきらかに日本の防衛をめぐる政治的な発言といえる。

その発言があまりにも無責任に聞こえる。いまや中国は、「強大な清帝国」も比較にならないほど強大になっている。その中国を相手に戦争を始めることは、日本にとって自殺行為に等しい無謀なことだ。その無謀なことをこのインタビュイーは、あたかも当たり前のように語っている。そこに小生などは危険を感じる。

このインタビュイーは、日米安保を金科玉条にして、アメリカの言うことには何でも付き合うのが当然だというような雰囲気を隠さない。バイデン政権になって、アメリカは露骨に中国への人種戦争を仕掛けている。それがいつ軍事衝突に発展してもおかしくはない。そういう情況の中で、アメリカの意向にほぼ盲目的に従うのは、日本としてあまりにも危険だ。

このインタビュイーは、アメリアに全幅の信頼を寄せているようだ。日本一国では到底中国やロシアに対抗できないからには、アメリカとの同盟を重視するのは理解できる。だが、アメリカと運命共同体になって、中国との軍事対立に進んで付き合うというのは、能のない話だろう。

このインタビュイーは、アメリカがよほど信頼できるらしく、「日本が本当に困っているとき助けてくれる信頼できる国」だと言っている。安部前首相は、やはりアメリカを深く信頼していて、アメリカの若者が我が国を守ってくれる、とまで言った。自分の国の安全を外国の若者にまかせて涼しい顔をしている指導者がどこにいるものかと、小生などは大いにあきれたものだ。このインタビュイーの発言は、そうした幼稚さを感じさせる。こういう幼稚な指導者が日本の軍事力の行使を指導するのでは、かつての皇軍の二の舞になるのではないか。そんな余計なことまで、心配させられたインタビューだ。





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