ラムズフェルドの悪行

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元ブッシュ政権の国防長官としてアメリカの対イラク侵略戦争を主導したラムズフェルドが死んだ。そこで日本のメディアを含め各国のメディアが論評を出しているが、ほとんどが否定的な評価を下している。事実に基づかず、勝手な思い込みで外国を侵略したあげく、その国つまりイラクを破滅的な混沌に追いやったというような評価だ。そうした論評の中には、ラムズフェルドの人間性を疑うものもある。ラムズフェルドは自分の犯した行為の意味を理解できず、したがって反省することもなかった。だから彼は、いわば、「気違いに刃物」ということわざを体現するような男だ、ととりあえず日本人ならそう言うところだろう。気違いは自分の行為に責任を負うことはないから、何でも好き勝手なことができる。だからその気違いに因縁をつけられたイラクは、天災に見舞われたと思うほかはないだろうというわけである。

そんな気分を強く感じさせる文章を、アメリカへの亡命イラク人らしいアル・アキーディ女史がニューヨーク・タイムズに寄せている。それを読むと、自分の国を滅茶苦茶にしたラムズフェルドを嫌悪する気持ちが伝わって来る。だが彼女は、ラムズフェルドを大物とは思っておらず、こんなバカ者にいつまでもこだわるのは馬鹿々々しいといった気持ちを表出している。こんな男の死などはどうでもよいと言っているくらいだ。

彼女の推測では、ラムズフェルドはイラクの反フセイン派にうまく利用されたということらしい。フセインは、たしかに専制君主であり、また死ぬまでその地位にとどまり、自分の死後は息子に地位を引き継がせるつもりでいた。彼の専制君主ぶりはすさまじく、政敵は容赦なく殲滅した。そこでフセインの政敵たちが、アメリカを利用してフセインを倒そうと考えた。かれらはあらゆるタイプのデマを流し、アメリカのイラク侵略に正統性を持たせるように協力した。その思惑は成功し、ラムズフェルドはフセイン一派を接滅した。

その結果何が起ったか。ありとあらゆる無法者どもがイラクにやってきて、国を破滅的な混乱に陥れた。フセインは確かに悪党だったが、この新たにやって来た悪党ども(それにはISも含まれる)は、もっとひどかった。おかげでイラクは、国家としての体裁をなさなくなり、まともな人間が住める環境ではなくなった。そうした一切はアメリカの侵略に端を発しているにかかわらず、ラムズフェルドは、それはイラク人の問題であって、自分には関係がないという態度を通した。

そうしたラムズフェルドのあまりにも無責任な姿勢に、アル・アキーディ女史は強い怒りを感じるらしいのだが、しかしこんなバカ者に怒ってもなにも生産的なことにはつながらない。そういって彼女は、ラムズフェルドをある種の精神異常者のように見るのである。

(参考)Donald Rumsfeld Tore My Country Apart By Al Aqeedi NYT)





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