大江捕魚図:富岡鉄斎の世界

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「大江捕魚図」と題するこの絵は、明の文人唐寅の詩の一節をイメージ化したもの。唐寅は生涯仕官することなく市井の文人として生きたが、書画をよくし人々に愛された。その点では、市井の文人を自負して書画に励んだ鉄斎と境遇が似ている。また唐寅は、日本とも馴染みがあり、日本人にあてた手紙(贈彦九郎詩)も残っている。鉄斎は唐寅のそんなところに共感して、この絵を制作したのだと思う。

賛には、猟師たちが気楽な暮らしぶりを自慢する様子が書かれている。富を求めてあくせくするより、取立ての魚を食いながら、船べりを叩いて歌を歌っているほうがよほどましだというような内容である。

川のところどころに猟師たちが船をとめて、釣りをする一方で、岸辺で宴会を催すものもいる。大江とはいいながら、川の幅はそんなに広くはない。

のんびりとして、開放的な雰囲気が伝わってくる作品である。

(1916年 紙本淡彩 149.5×80.8cm 東京国立博物館)





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