岸田政権に円安は止められない

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このところ円安が急速に進んでいる。原因はアメリカが金融緩和政策を見直し、利上げに踏み切っていることだ。そのため、ドルが買われて円が売られる事態が起き、それが円安をもたらしている。金利の差の拡大が、為替レートの変動につながるのは、経済の道理であるから、簡単に止めることはできない。止めるためには、日本も金利を上げる必要がある。だが日本には金利を上げることができない事情がある。

理由は政府の借金が異常な規模に膨らんでいることだ。いまやGDPの二倍を超え、額としては1000兆円を超える。普通なら破産しておかしくない借金だが、いままでそうならずに済んできたのは、ゼロ金利のおかげだ。ゼロ金利のおかげで、政府にいくら借金があっても、利息を払わずにすんできた。無論元本を返す必要はあるわけだが、利息を払わずに済むおかげで、借金を重ねることで返すことができた。同じ自転車操業でも、まだましだったわけだ。

ところが、かりに金利をあげれば、国は利息を払う必要に迫られる。たとえば、1パーセントあげれば、利息の金額は10兆円になる。これは国家予算の一割になる。2パーセント上げれば、国家予算の二割が利息の支払いに充てられるわけで、そうなっては予算を組むことさえむつかしくなるだろう。自転車操業が行き詰るわけだ。

だから、日本政府には金利を上げるという選択肢はない。その結果円安は一層進むだろう。これまで円安は日本経済にとって追い風だと言われてきた。円安が輸出産業を潤し、日本経済全体が底上げされるからだ。しかしそれは、輸出産業が日本経済を牽引するという前提にたったものだ。いまや、輸出産業の根幹をなす工業の日本経済全体に占める割合は26パーセントにまで落ち込んでいる。いまの日本経済は工業中心ではなく、サービス産業中心なのである。だから円安は、日本経済全体としては、プラスよりもマイナスに働くように変わってきている。円安で輸出は伸びるかもしれないが、輸入品の価格は上がる。そのことで日本国民は、景気がよくならないのに、物価だけが上がるという非常に悪い循環にさらされる。

これまで、日本の政策責任者たちは、国の借金がいくら増えても破産することはないと言ってきたが、それは無責任な主張というべきだ。たしかに、円安がいくら進んでも、それで痛むのは国民だから、国民が我慢さえすれば、国の財政が破綻することはない。しかし国民の犠牲のうえでしか財政を維持できないということは、究極の無責任政治というべきである。自民党岸田政権はその究極の無責任政治を避けられないだろう。いまだに、財源の議論なしで、巨額のバラマキ予算を組もうとしている。まるで自分たちには打ち出の小槌があるのだと思っているかのようである。だがそんなものはない。今流行のMMTをはじめ、国に放漫財政をそそのかしている主張は、すべて国民の犠牲を前提にしているのである。ともあれ、自民党岸田政権には、円安を止める意欲もなければ、またその能力もないということを念頭に置いて、来る政権選択選挙に望んだほうがよい。






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